5月になると、薄緑色の新芽が鮮やかに伸びていきます。差し込む光がやわらかく、吹く風もそよいでいます。満開の桜のような派手さはなくとも、萌黄色の新緑は、命の勢いを感じるとともに、輪廻の始まりに、厳かな気持ちで息を胸いっぱいに吸い込みたくなります。

新天皇、皇后を迎え、さらにこの芽吹く5月の意味を重ね合わせてしまいます。

この皇位継承は、「平成」を惜しみ、過ごしてきた30年間を振り返るきっかけにもなりました。そして新しい「令和」を迎えることに、誰しも新しい時代に大きな期待を抱いているようでした。

 

先の大型連休中は、家族と山に登ったり、自然公園で新緑の眩しい木々を鑑賞したり、色とりどりのつつじの花を愛でたりして、ゆったりと過ごすことができました。

烏帽子岳まで車を走らせると、うっそうと茂った森の中に入っていきます。今にもトトロがそこから出てきそうです。視界は突然夕暮れの様相になり、見上げると木漏れ日だけがわずかに射していました。途中の湧き水は、まるで初夏のような陽気の私たちに、涼感を与えてくれました。

森に入ると草や葉っぱの匂いを感じて懐かしい気持ちになるのは不思議な感覚です。

 

先日亡くなった市原悦子さんの『日本昔ばなし』の中には、山や海、川や里、島など様々な自然が登場してきます。自然の中で営む人物や動物を市原さんは巧みな描写で表現します。それには、人並み外れた観察力と演技力を感じます。

昔話は、昔から語り継がれてきた民話のひとつです。勇ましいお話、笑えるお話、ちょっぴり怖いお話まで内容はいろいろですが、どれもちょっとほっとしたり、笑えたり、考えさせられたり、秀逸なストーリーばかりです。

むかしむかしの日本の暮らしや風景や物語の世界を、絵本を通して体感することもできます。子供たちにもきっとその幼い心の中に、お母さんに読んでもらった記憶として留まっていくのだろうと思います。

テレビのアニメーションで楽しむのも、音楽や効果音が入ることによって、また、先の市原さんのような、語り部によって、その物語はさらに印象付けられることになります。

昔話の『桃太郎』の中から、昔のおじいさんは、山へ芝刈りに行くこと、おばさんは、洗濯機ではなく川で洗濯をしていたことを学ぶのです。『はなさかじいさん』や『おむすびころりん』など、善い行いをすると、必ず自分に良いことが返ってくることを教えてくれます。 悪いことをするすると鬼や、山姥(やまんば)がその人を懲らしめに来ます。

子育てでは、どんなに小さな子供にでも、善悪についてはきっちりと教えていかなければなりません。親が言うよりも、このような昔話で学んでいくこともあるのではないかと思います。

『カチカチ山』のように、動物が擬人化されて、愉快に生活する様子は、またその絵に描かれたに表情からも読み取ることができて、同じようにこの世に生を受けて、人間と動物が共存する社会を捉えているところも、日本特有の童話(昔話)が、読む人に共感を与える所以ではないかと思います。

子供に読み聞かせた絵本で私が最も感動したのは、『ごんぎつね』と『てぶくろを買いに』です。

 

一方、ヨーロッパを代表するグリム童話は、たいていは森が舞台です。特にドイツの人たちにとって森は、一種独特の存在のようです。『赤ずきんちゃん』『ヘンデルとグレーテル』『白雪姫』のような童話の中の森は、現実ではとても考えられない空想の世界が広がっていきます。

また、森がただの通り道や,散歩や仕事場など,日常生活に関わり,人々にとって身近な場所としても描かれています。グリム童話の森という場所は,異世界のような場所であるだけではなく,日常性,現実性をも持っている場所だということでした。昔話においては日本とドイツの森の捉え方には、少し違いがあるようです。

 

連休中は、いろんなところを散策して、自然に触れる機会ができました。大きく息を吸い込むと、懐かしい緑の匂いがします。道ばたのマーガレットや軒先のパンジー、そして木々の匂いは、私をすっかりリラックスさせてくれました。スーッと疲れが取れていくような感覚を覚えます。

本当に「みどりの香り」には疲労・ストレスを解消し、脳の働きを活性化させる効果があることが、大学の研究により確認されているそうです。気のせいではなかったのですね。

 

5月の過ごしやすい季節も長くは続かず、6月に入ると梅雨の季節となります。蒸し暑い毎日になりますが、それはそれとしてその時期を存分に楽しみたいと思います。

photo by mizutani