1年で一番好きな季節、秋が訪れました。そよぐ風に、微かにきんもくせいの香りが乗ってひんやりとした空気を肌で感じます。うろこ雲の秋空は遠く遠く広がっています。

先日、地元の新聞で、日本最古の歴史書『古事記』の国生み神話で、神が5番目に作った島(天比登都柱(あめのひとつばしら))として登場する「壱岐」をテーマに、壱岐市限定の漫画カルチャー誌『COZIKI』の紹介がありました。日本最古の歴史書「古事記」の登場人物や物語をモチーフに 漫画、写真、小説、詩など様々なアーティストが創作した作品を現代の「新たな神話」として掲載する雑誌です。

天比登都柱(あめのひとつばしら)の「柱」とは天地を結ぶ交通路という意味で、壱岐は天と地を繋ぐ架け橋の役割を担っていたと考えられています。歴史好きな私は、神話と聞くだけで厳かでミステリアスな感じを受けてしまいます。

新聞の記事によると、これにちなんだイベント「神話の島の漫画・アート展『カミテン』」が開かれ、第一線の漫画家らの原画展やトークショー、人気俳優の写真展、音楽ライブなど注目の「サブカルチャー」満載の内容で繰り広げられるというものです。

島の活性化を目指して、壱岐市と連携して島内でしか入手できない同誌や特産品を企画しているとのこと。壱岐の歴史と魅力を島外の人に知ってもらいたいと、市の観光課も期待しているとコメントしてありました。

壱岐は、縄文、弥生時代から人が定住し、1993年に長崎県教育委員会が島内にある原の辻遺跡を弥生時代一支国の中心集落と発表し、話題になりました。その後も、日本史の授業で出てくる、中国の史書『三国志』の『魏志倭人伝』では、邪馬台国が「一大國」(一支國いきこく)を支配していたと記されています。

ここ長崎県は、多数の島々が点在しています。壱岐市と対馬市は、長崎県というより福岡県に近く、経済や教育などは福岡との関わりが実は深いようです。

これらの島々は、中世に、現長崎県松浦市を地盤としていた、松浦党の水軍の勢力が著しく、中国からの元寇や朝鮮半島の高麗からの襲撃を退け、そのことから周辺の島々が長崎県になっていると聞いたことがあります。江戸時代には松浦党の流れを汲む平戸松浦氏が治める平戸藩の一部になり、明治の廃藩置県では平戸県に属し、再編により長崎県の一部となったという経緯です。九州北部の島々は、ことごとく長崎県の行政区域となったのでした。

九州北部の玄界灘沖、福岡県と対馬の中間地点に位置する青い海に囲まれた壱岐島。古事記によると、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)が天照大御神(あまてらすおおみかみ)の次に産んだのが月讀命(つくよみのみこと)とされていて、京都の月讀神社は、487年壱岐の県主(あがたぬし)の先祖忍見宿祢(おしみのすくね)が壱岐から分霊したとされ日本全国の本元であり、壱岐島が”神々の宿る島”とも言われている所以です。またその神話はそこに住む人々の日常の暮らしに深く根付いているのです。

日本神話は、「因幡の白兎」などのように、子供のころから馴染み深いものがありますが、「黄泉の国」の話など、日本人のものの考え方の原点がそこにあるのではないかと思います。肉体の死という厳しい現実を目の当たりにして、しかしその死をきっかけに生の意味を問い直し、その生を次の世代に引き継いでいくということが、生きるということなのだと教えているようです。

同じ長崎県でありながら、まだ訪れたことのない場所がたくさんあることに気が付きます。写真で見る壱岐の海は、コバルトブルーの透きとおった水面に秋空が映って、その美しさにため息が出ます。

神話の一支国(壱岐島)には、近いうちにぜひ行ってみたいと思います。

photo by mizutani